行動面接 ― STARテクニックで乗り切れ

行動質問とは?

行動面接は、グローバル企業だけでなく多くの会社の面接で採用されるようになってきています。この面接の特徴はあなたの過去の行動(特定の状況)を質問することによって特定のコンピテンシー(能力)の有無を図ろうとします。

「〇〇という状況があれば説明してください」とオープンな質問になる場合がほとんどで、前職での具体的な経験を話してほしいと求められます。

したがって事前にある程度準備しておかないと「チームとはどうあるべきだと思いますか?」といった抽象的な質問より、かなり答えづらいと思います。

 

行動面接はSTARで対処

行動面接の質問には、必ずSTARというメソッドで対処します。STARは、Situation(状況)、Task(課題)、Action(行動)、Results(結果)の頭文字を取ったもので、具体例を簡潔で理解しやすく説明するのに効果的なメソッドです。

 

以下、次のような質問がされたという想定で解説していきます。

質問例:期限が短く重要なプロジェクトに取り組んだ時のことを教えてください。

 

状況(Situation):状況や課題について説明する

まず最初に、あなたが過去に経験したエピソードについて話します。

あなたの置かれた状況をあなたのことをまったく知らない人に説明しなければなりません。出来る限り端的にかつ外部の人でも分かるように、あなたやチームが置かれた状況を説明してください。

(回答例)

私は外資系メーカーで、ファイナンス部門のスーパーバイザーとして働いています。昨年、年度末決算の際に取り組んだプロジェクトについてお話します。当時、チームは退職による人員不足で、大量の未処理の取引を抱えていました。決算期を迎えチームもストレスを感じて、士気が低下していました。タイミング悪く、その年度に会社を買収したため、その会社を決算に取り込むプロジェクトが必要になりました。

ポイント:

  • 端的に情報を説明し、外部の人でも理解できる
  • ここで日常性(人手不足)に複雑性(新しいプロジェクト)を足せばリスナーは引き込まれる

 

課題(Task):置かれた状況においてあなたの役割を説明する

こうした状況に対して、あなたはどういった役割を担っていたかを説明します。

(回答例)

私はスーパーバイザーとして、チームをまとめながら決算作業を完了させる責任があります。また、人手不足からファイナンス部門の中で他にプロジェクトを推進できる余力や知識がある人がいないため、このプロジェクトについても私が決算業務の一部として引き受けることなりました。

 

行動(Action):どういう行動を取ったか

面接官はあなたがどういうアクションをとる人かを見ています。

与えられた状況と自分の責任範囲で、複雑な状況を好転させるために何をしたのかを伝えます。チームとして〇〇をした、と話してしまいそうですが、ここは「私は」を主語として自分がどういうアクションをしたかを説明します。

(回答例)

プロジェクトを引き受けると決めた時点で、まず、上司と優先順位と得られるサポートについて話しました。このまま引き受けても従来のまま決算業務とプロジェクトを同時に作業すれば、間違った決算数値を報告するリスクが高くなり、決算もプロジェクトも両方終わらないリスクがあるからです。

3つのアクションを提案し、実行しました。(1)決算業務のうち8割の入力作業は外注する、入力結果は私が検証する、(2)決算工程表をアップデートし、買収された会社の決算作業にモレがないようにする、(3)チームの作業割当をもう一度見直し、全員とブレインストーミングを行って効率化・単純化できる工程を洗い出す。

ポイント:

  • 複雑性にどう論理的に対応したか
  • 「私」視点で説明できている
  • アクションが論理的でポイントを抑えて説明している

 

結果(Result):行動した結果はどうだったか

物事がどれだけうまくいったか、問題がどのように解決されたか、そしてその過程で何を学んだかを伝えます。出来る限り、結果を数字など客観的に表現します。

(回答例)

上司に外注を承認いただいたことで、足りなかったリソースを概ねカバーできて、プロジェクトに取り込む余力を得ることができました。

また、プロセスの透明性を高め、作業工程をチームと共有することで、チームもゴールを見据えながら作業を行なえたため、モチベーションも高く保つことができたと思います。結果、買収起業の決算作業を含め、すべての決算作業は予定日より余裕を持って完了できました。

驚いたのは、チームと危機感を共有した結果、多くの改善案がチームからでてきたことです。過去から深く考えることなく実施していた作業を見直した結果、不要となっていた入力作業を削減するなど、決算業務のおよそ20%を削減することができました。これはチームの人員1人分が削減できたことになります。こうした経験を踏まえこれからも作業の棚卸しをチームと一緒にしていきたいと考えています。

ポイント:

  • ピンチをチャンスに変えられたらベター
  • 出来る限り数値などを入れて客観的に結果を説明する
  • 仮に失敗しても何を学んだかを説明する

 

必須!成功パターンの確立

実例を見てもらったとおり、こうした質問は準備していないと、うまく答えることはできないでしょう。

STARは何か?を知っていても、何もストーリーがなければ当然答えることはできません。すごく大きな事を達成した事例を集める必要はありませんが、いくつか自分の「成功パターン」を事前に準備しておきます。

成功パターンは少なくとも3つ用意しておきましょう。

なぜ3つ以上の成功パターンが必要かというと、面接が少なくとも2回〜3回行われ、「試される資質」が毎回異なるからです。つまり、1回目は責任感と誠実さ、2回目はお客様への対応と対応の俊敏さ、3回目は分析能力と人を育てる力、といった形で毎回違った角度で質問がされる場合が多いです。

ポイントは、1つの成功パターンのエピソードが複数の資質をカバーしていることです。つまり、何らかのプロジェクトの話をする場合、誠実さ、分析能力、責任感などいくつかの資質を同時にカバーすることを意識します。

また、成功パターンといっても、成功したことばかりではなく、失敗して学んだ(できればその後学んだ結果成功した)エピソードも準備しておいてください。

 

試される資質と質問例

 

誠実さ

チームの方向性が変わったことをチームに伝えたことは?

もっともつらかったフィードバックは?

守れなかった約束は?

 

責任感

自分の責任範囲外ことを引き受けたことは?

約束を守れそうにないと思ったときは?

同僚が悩んでいて助けようと思ったときは?

 

分析能力

深く考えたり分析した問題は?

メトリックスやKPIを作ったことは?

プロジェクトの前提条件にチャレンジしたことは?

 

人材育成

チームメンバーのキャリア構築の具体例は?

誰かの長所を伸ばすためにフィードバックした時は?

パフォーマンスの低い人へどのようにフィードバックしたか?

 

判断能力

データが十分にない中でビジネス上の判断をしたことは?

競争相手や参考になるものががいないマーケットに進出したことは?

あなたの判断が間違っていたときはありますか?

 

問題解決能力

締め切りが厳しい中で決断をしなければならなかったことは?

上司に相談せずに重要な決定をしなければならなかったことは?

状況に応じてあなたが即座に対応しなければならなかったことは?

 

お客様への対応

困ったお客様とやりとりしたことは?

あなたがお客様からフィードバックを得たことは?

お客様のためにあなたが現在のチームで実施したことは?

 

問題対応能力

納期が厳しいプロジェクトを担当したことは?

半分以上プロジェクトが進んでから、問題に気がついたことは?

プロジェクトが思い通りに進まず、予定どおりに完了しなかった時は?

 

改善能力

複雑な問題をシンプルな方法で解決した例は?

あなたがリードした最も革新的なことは?

チームのイノベーションをどうやって引き出しましたか?

 

まとめ

行動面接は準備をしておかないと非常に答えにくい質問ばかりです。

行動面接と読んでいなくとも多くの会社でそうした質問がされますので準備しておけば、多くの面接のパターンに対応できます。

少なくとも3つほどの「成功パターン」をSTARで準備しておきましょう。

 

 

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