採用試験で重視されるソフトスキルとは?

人材を採用する時、経験豊富な人、資格を持っている人を優先するのは自然なことですが、経験や資格を持つ人が新しい職場で必ずしも成功するとは限りません。

書類選考で最低限の経験や資格の有無をチェックしますが、面接で重視するのは2つ、候補者が組織にマッチするかという点とソフトスキルを持っているかという点です。

ソフトスキルとハードスキル

そもそもソフトスキルとハードスキルとは何を指すのでしょうか?

ビジネス上のハードスキルは、評価基準が明確なスキルを指します。具体的には、プログラミングやコーディング能力、TOEICのスコアや業務に必要な資格、大学や大学院の学位などが該当します。 

一方、ソフトスキルは評価基準が人によって異なり、コミュニケーション、リーダーシップ、問題解決能力など、その人の内面にフォーカスしたスキルを指します。 

ハードスキルは基準が明確で分かりやすいため、書類選考では経験と合わせてチェックされます。前述したように、ハードスキルや経験が、その組織にとって「優れた人材」であるかどうかの決定的な要因ではありません。

一方のソフトスキルは人が持つ特徴や特性であり、職場における人間関係やカルチャー、コミュニティーのあり方に大きく影響します。チームでコラボレーションしながら成果を求められる職場においては、クオリティーに大きな影響を与えます。

なぜソフトスキルが採用において重要視されるか

ハードスキルや経験は、仕事によっては業務を遂行する上で不可欠です。例えば、ソフトウェアを作る会社において、プログラミングの知識がないと仕事ができません。

一方、高いプログラミングの知識があるからと言って、その人は必ず成功するでしょうか?

現在、プログラミングは高度な組織的作業となっており、少人数のチームがモジュールを共同して担当する形が一般的です。プログラミング力が高くとも、チームとして問題を議論し、共同して解決できないのであれば、組織の中のプログラマーとしては機能しないでしょう。

EQ(エモーショナル・インテリジェンス)

通常、ソフトスキルとして英文の履歴書に記載しませんが、ソフトスキルに関する重要な概念としてエモーショナル・インテリジェンス(IQと対比してEQと呼ばれる場合が多い)があります。

EQは、問題や紛争を解決する能力、ソーシャル・スキル、自己認識、共感力など、多くのソフトスキルを包括する概念です。

優れたEQを持つ人は、自分の持つ感情と周りの人の感情を判断し、組織の中の関係性を理解し、他人にうまく影響を与える能力を備えています。こうしたスキルは良好な職場関係を築くのに役立ち、チームの生産性とパフォーマンスを向上させます。

重要なソフトスキル

組織として働くために必要なソフトスキル。外資系企業に就職・転職を考えている人は英文の履歴書に必ずソフトスキルを盛り込むべきです。ここでは、ほとんどの会社が要求するソフトスキル10個について説明します。

1.コミュニケーション・スキル

Communication skill

私はコミュニケーションが上手です」

言うのは簡単ですが、さまざまな人とうまくコミュニケーションを取るには経験が必要です。

コミュニケーション・スキルは、主に書面(written)によるものと口頭(verbal)によるものに分けられます。

書面によるコミュニケーションは、メディア、広告やコンテンツ作成に関わる職種においてはハードスキルとなるものですが、そうした職種でなくても書面によるコミュニケーションは重要です。Amazonではミーティングの前に必ず文書を読み合わせてから議論に入ることによって、参加者の理解度にバラツキがでない、後で違う解釈にならないことを狙っています(パワーポイントは原則認められていない)。

効果的なコミュニケーションを行うチームは、組織的に効率よく作業し、上手にアイデアを出し合い、互いの考え方を理解する文化があります。コミュニケーション・スキルは、単に相手と話すスキルではなく、複雑なアイデアを適切な方法で的確に伝え、効率的に組織として仕事をするスキルです。

2.コラボレーション・スキル

Collaboration skill

そもそもコラボレーションとは何でしょうか?

プロジェクトやタスクを完成させたり、アイデアを実現化するために、複数の人と一緒に作業することを意味します。職場では、2人以上の人がチームや会社の共通の目標に向かって協力することでコラボレーションが発生します。コミュニケーション・スキル、対人関係のスキル、知識の共有、目標を共有する力などが必要です。

チームで働くことは、生産性を高めるだけでなく、社員同士の健全な関係を育むことにもつながります。良い協力関係は、仕事へのモチベーションを高めることに寄与します。さらに、コラボレーションは一人では難しい複雑な課題に対するソリューションを開発するのに役立ちます。

コラボレーション・スキルを持っていると思う人は、過去に成功した例を思い出して、面接の際に話せるように準備しておきましょう。面接官から、「重要なプロジェクトであるにも関わらず、別のチームがリソース不足を理由に手伝ってくれない場合、あなたはどうしますか?」といった質問にも答えられるように準備しておきましょう。

3.チームワーク(チームプレーヤー)

Teamwork (Team Player)

優れたチームプレイヤーは、周囲の期待以上の働きをして、チーム全体の目標達成に貢献します。一緒に働く仲間の気持ちを思いやり、チームとしての団結力を高める提案をし、個人としての利益よりもチームとしての利益を優先します。真のチームプレイヤーは誠実で献身的、異なる見解や意見を受け入れ、それぞれのメンバーを尊重します。

またチームプレーヤーは、他の人の意見を聞き入れ、意見が対立するような場面においてもそれを仲裁する能力(すなわちコンフリクト・マネジメント)を持っています。一方、チームの意向を重視しすぎると、自分の意見をうまく主張できなかったり、他の人からチャレンジされるとすぐに目標を変えてしまうといった、チームプレーヤーの長所が短所になりえるため注意が必要です。

4.適用性(あるいは柔軟性) 

Adaptability 

新しい環境や仕事に適応する能力には高い価値があります。特に動きが激しい業界では、当初予期しないことが発生したり、トレンドが常に変化します。何が起きても、適応できるだけの柔軟性がないと生き残っていくことができません。

応募しようとする職業がIT関連ではなおさらです。ソフトスキルに必ず入れておくべき資質の一つです。新しいテクノロジーやシステム、仕組み、あるいはプロジェクトなど、環境の変化に柔軟に対応できることが求められます。

5.創造性

Creativity

変化の激しいこの時代において、柔軟性と同じように必要とされるのが創造性です。クリエーティブというと作家やデザイナーを想像する場合が多いと思いますが、クリエーティブではない職業でもクリエーティブな問題の解決が求められる場合があります。

何か問題に直面したとき、私たちの脳は自然に近道をしようとします。過去に使った情報を繰り返し使う傾向がありますが、新しいタイプの問題には新しいタイプの解決策が必要となります。問題や状況を新鮮な視点で見て、常識にとらわれない解決策を提案する能力が求められます。

6.問題解決力

Problem-solving skill

問題解決能力とは、問題を細かく分解し、解決するために論理的な解決策を実施するスキルです。このスキルを持つ社員は、自分で考えて行動する傾向が強いため、候補者に求める重要なスキルの一つとなっています。履歴書やカバーレター、面接では、これらを前面に押し出しましょう。

学校、仕事、ボランティアなど、これまでに直面した課題や解決した問題の例を探してみましょう。面接では、困難な状況、問題解決のため取ったアクション、使ったスキル、その結果を説明できるようにしておきましょう。

7.クリティカル・シンキング

Critical thinking

クリティカルシンキングとは、情報を批判的・客観的に分析し、合理的な結論を導き出す能力のことです。入手した情報や人から聞いた意見や知識を改めて見つめ直し、そこから論理的により良い選択肢を考えだす力といえます。

たとえ著名人やメディアの情報であっても、まずは批判的に情報を捉え、物事の是非を解釈して判断するといった能力は、採用プロセスでも高く評価されます。

8.リーダーシップ

Leadership

リーダーシップ・スキルは、役職やポストに関係なく、すべての役割に不可欠なものです。すべての求人がリーダーシップを必要とするわけではありませんが、どんなポジションであれ採用しようとする人には、職務に見合った決断を下す能力と状況に応じて行動できる能力を期待します。

リーダーはチームを刺激し、動機を与え、同僚に配慮して行動します。リーダーシップは、上司やマネージャー、責任者の特権ではなく、プロジェクトやタスクの責任者も必要とする能力なのです。

Amazonには14個(現在は16個)のリーダーシッププリンシプルが存在します。たとえAmazonで働かなくても、その考え方は多くの会社の別のポジションで使えるものです。是非参考にしてください。

リンク

9.対人関係スキル

Interpersonal Skills

対人関係スキルとは、対人関係で発揮される資質や行動を指し、もっとも必要とされるソフトスキルの一つです。優れた対人関係能力は、チームと協力して困難な問題を解決することに役立ちますが、逆に、その能力がないと、職場で対立したり、人と協力して仕事を進めらません。

対人関係スキルは人間関係をうまく機能させるスキルの総称です。このため前述したEQはまさに対人関係スキルであり、対人関係スキルとはEQを持っていること、とも言えます。また、共感力、コミュニケーション、シーダーシップ、積極性や交渉力といったスキルもこのスキルの範疇であると言えます。

10.分析能力

Analytical Skills

分析能力とは、データの収集、整理、視覚化、融合ができる能力です。これにより、パターンを見極め、結論を導き出し、業務の生産性や業績を向上させるための解決策を見出すことができます。

近年ビッグデータを利用できる環境が整い、分析能力はますます重要になっています。会社では大小さまざまな意思決定が行われます。一昔前はベテランの勘や経験に頼った意思決定が行われていましたが、現代ではデータの裏付けなしに意思決定が行われることはほぼありません。この能力を必須とする職種は増える一方です。

まとめ

採用試験において、すばらしい経験とハードスキルをもった人だけが採用されるとは限りません。十分な経験や資格がなくとも、面接までこぎ着け、会社に対する熱意とソフトスキルで採用面接に合格した候補者を何人も見てきました。そうした人ほど入社した後に成功しているものです。

ソフトスキルを過小評価してはいけません。ソフトスキルで上手にアピールすることによって、チャンスが与えられることは大いにあります。日々、ソフトスキルを向上させ、いざ転職するときにはその能力を最大限にアピールできるようにしておきましょう。


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