頻発する問題はメカニズムで解決する

 

頻繁に同じ問題が起こる、といったケースに出くわすことがあると思います。

我々はチームを呼び出し、もっと努力しろ、もっと上手くやれ、と指示するのですが、人々の善意(good intentions)を求めてもほとんどのケースで効果がありません。

なぜなら、人々はすでに善意を尽くしており、人々からさらに善意を求めるということは、人々に変化を求めていないからです。

では、善意が機能しないのであれば、一体何が機能するのでしょうか?

それはメカニズムに他なりません。

– ジェフベゾス

なぜメカニズムが必要なのか?

問題が繰り返されるたび、チームを集めて原因究明のために魔女狩りが行われます。

「この問題は、パフォーマンスに問題があるAがチェックするのを忘れたからだ」

「またAがミスした。コーチングを実施して同じミスをさせないようにしよう」

「今回は同じチームのBがミスをした。多分、チームとして十分なトレーニングがされてなかったからだ。チーム全員を集めて、もう一度トレーニングをしよう」

「今度は違うチームのCが同じようなミスをした・・・」

よくあるケースとして、「もっと頑張れ」「もっとうまくやれ」が指令になることがありますが、そうした指令は人々の善意を求めていることになります。

日本でよく言われる精神論ですね。

アマゾンでは、繰り返される問題をメカニズムで解決します。

ジェフベゾスは善意は通用しない、ということを理解した上で、メカニズムを 「完全なプロセス 」と定義しました。

ここで「完全な」に込められた意味は、単にツールを構築するのではなく、ツールの採用を促進し、その結果を検証して、プロセス修正を行うという一連のプロセスがなければ、メカニズムは上手く機能しないということを意味しています。

アマゾンのユニークなメカニズム

 

アマゾンにおけるユニークなメカニズムの例をいくつかご紹介します。

アンドン·コード

アンドンは元々トヨタ生産方式の要素の一つで、工場の生産ラインに設置されたランプ(あんどん)に付いた紐を指し、生産ライン担当者がラインの異常があった場合にこの紐を引くことによって、異常を他者に伝えることを目的としています。

ライン担当者でも生産ラインを止めることによって、早期に欠陥を修復し高い品質を維持することが可能となります。

アマゾンも品質向上の観点から、製造業ではありませんが、アンドン·コード(ツール)というメカニズムを導入しました。

顧客からアマゾンの商品ページ等に不具合が報告された場合や倉庫に品質不良の疑いがある商品が見つかった場合(インプット)、現場担当者にもアンドン·コードを引く、つまり商品を商品棚や出荷から一旦取り除くことができる権限が与えられています。

担当チームはその原因を究明し再発防止策を実行します(アウトプット)。

バー・レイザー

アマゾンでは日々大勢の人を採用しているため、インタビューを実施する人の力量によって採用される人の品質が左右されるリスクがあります。

そこでアマゾンではバー・レイザー(直訳するとバーを上げる人)というメカニズムを導入し、採用された人材の品質が一定になるようにしています。

このメカニズムのインプットは候補者、アウトプットは高い品質のアマゾン従業員(合格者)です。

バー・レイザーは採用するチーム以外の一定の研修を受けた経験のある人で、一定の役職の採用には必ずインタビュー・プロセスに入ってもらう必要があります。

バー・レイザーも他の面接官と同じような観点で候補者の採用・不採用の投票を行います。

しかし、バー・レイザーがYesと言わなければ、採用したいと思っているマネジャーが、どれだけ素晴らしい候補者だから採用したい、と叫んでもその候補者を採用することはできません。

メカニズムはどうやって作るか?

メカニズムをデザインするためには、あるべき姿から逆算して考えます。

  • アウトプットの定義

繰り返し発生する問題を解決し、求めるビジネス成果を出すために必要なアウトプットを定義します。

  • 既存のツールの確認

既存のツールの中で、ツールとして使えそうなものを探します。適切なソリューションがまだ存在しない場合は、それを作ります。

  • インプットの整理

アウトプットに必要なインプットを整理します。

  • ツール利用者の特定

ツールを使う必要のある人を特定し、ツールを採用してもらうように働きかけます。

もし、彼らがツールを使いたくないと思うなら、彼らの懸念に対処する方法を考えます。

  • メカニズムの検証

導入したツールによって問題が解決されているかどうか検証します。

問題が解決していなければ、なぜ解決していないのか、そのツールが適切な人に使われているか、正しく機能しているか、そして期待するアウトプットと結果をもたらしているかを確認します。

  • 継続的な改善

継続的な検証に基づいて、メカニズムを継続的に改善していきます。

メカニズムの最初のバージョンは、おそらく完璧ではないでしょう。

メカニズムは、反復すればするほど良くなります。とにかく反復して使い続けることです。 

そうしないと、メカニズムは陳腐化し、単なるルーティーンになってしまいます。

まとめ

人は誰しも善意をもって問題に対処しています。

頻発する問題を人のせいにするのではなく、メカニズムで対応するのがマネジャーの責任です。

メカニズムを導入する場合、もっとも難しいのは、ツールを使う人がその重要性に気付き、自ら積極的に取り入れてもらえるように働きかけることです。

「仏作って魂入れず・・・」

 

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